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田園地域に建てる
外とのつながりを大切にしたウッドデッキのある
横長敷地の大屋根住宅
港建設のMADORI第二弾。
今回もどんな事を考えて設計したか思ったことを書いていきます。
前回とうって変わってマチナカではなく田園地域。
いわゆる田舎。
土地は広いからどこにでも建て放題。ってわけでもなく、制約はちゃんとあります。
以前建っていた家を解体して、敷地は畑になっていました。そこに再び建てます。その敷地は横に長い形。
向かって左が南側。
建物長辺を南に向かわせれば建物全体に明るさを確保できますがそれはできません。横長敷地の中で建てる為、短辺が南側に向きます。こちらをリビングにすることで確定。
また広い敷地ですが、大きくせずちゃんとコンパクトに建てる計画。外部ウッドデッキ屋根部分を含まず、室内の床面積を27坪台に抑えました。
田園地域なので、田んぼの景色、東山の景色が窓からよく見えるように、開放的な窓配置を心掛けました。
玄関は東側。玄関側の窓はプライバシーの観点からあまり大きくとりません。
また田舎ならではのバーベキューを楽しんだり、プールを出して遊んだり、外遊びがしやすいように、中と外のつながりが持てるウッドデッキをリビング横に配置。
例のごとくアルミのカーポートを設置。今回は建物の外観を邪魔しない、右側に配置しました。
今回も
耐震等級3(耐雪1m)。
耐風等級2
断熱性能はHEAT20 G2クラスで想定。
リビング・水回りは使いやすい1階に配置。
2階は子供部屋と納戸なんかに使う、いろいろ部屋。
平屋に近いような間取り。
主寝室は1階ですし、コストダウンのため、2階にはトイレ水回りは持ってきませんでした。
主寝室もぐるっと回遊できます。 キッチンもダイニングテーブルを中心に回遊できます。
回遊できることで、使いやすくなりますし、広く感じれるようになります。
まずは玄関前。
玄関左にアクセントとなる白い塗り壁を建てました。
この壁の左向こうにリビングがありますが、その目隠しとなる壁になっています。そして壁に沿って玄関ドアがあることで、玄関に誘導する意味もあります。
また、通り抜ける強風をこの壁で防ぐ、防風壁としての役目もあります。
玄関右には外収納。タイヤなんかもここにしまえます。
長岡では、住宅街でない郊外の昔から建つ家の多くが、玄関は東向きです。
冬は特に西からの強風が吹き荒みます。田んぼに降った雪を巻き込んで地吹雪となります。玄関を開けることさえも困難。
西に玄関を作るともろに室内に風や地吹雪を入れることになるので、郊外住宅の玄関は反対の東向きが多いのです。
それにならって玄関は東向きとしました。
玄関からリビングに入って正面にすっと視線の抜ける縦型の窓を設けました。
この敷地、裏の西側に田んぼが広がり周囲の目線を気にせず開放できるので、リビングに入ってすぐ正面に視界の抜けを作りました。
通常西側は夏の日差しをできるだけ室内に入らないようにあまり大きな窓はつけないセオリーがありますが、田園風景の視界の抜けと風景を楽しむことを優先して西側の窓は少し大きくとります。ただ1階にあるので、夏の日差しが強い時期はすだれを外から設置しやすいことから、夏は日射遮蔽対策をすればいいという考え。
夏は外が明るいので、すだれがあったとしてもすだれを透して外を見ることができます。
そこからリビング方向を見ます。
左がウッドデッキ。奥にリビングとなるベンチソファー。
この方向が田んぼの田園風景の広がる景色のいい、視界の抜ける位置ですのでこちらにも大きく窓をとることにしました。
ベンチソファーに座って景色が望める窓の高さにしました。
で、そのベンチソファーに座った様子。
ここからは吹き抜け部分とリビング全体も見れる特等席。
ソファーの角からテレビをみる方向。
足を伸ばして寝転んで見ることもできます。リラックスしてテレビが視聴できます。ぐうたら人間製造機。(悪い意味ではなく、リラックスできるといういい意味で)
そしてここから田んぼをながめる窓を見ると
田園風景の広がりを眺められます。
本来はこんなに地平線まで田んぼが続いているわけではないですが、イメージということでご了承を。
左側が南側。この左の窓の上の屋根は少し大きくせり出させているので、太陽高度の高い夏の暑い日射を防いでくれます。
元からある樹木も南側の日射を防いでくれるのに一役買っています。日射を防ぐことで室内の温度上昇をやわらげ、冷房効果が上がります。
そして太陽高度は冬になるにつれ低くなるので、日射を今度は積極的に取り入れ、部屋内に暖かさと明るさをもたらします。
樹木も葉を落とし、窓に入る光を遮らず、迎えてくれます。
ただ長岡の冬場の日射は1ヵ月のうち数日しかないので12月から2月はあまり期待しません。
それでも、数日しかないとしても、南側の暖かい陽射しは気持ちのいいものです。
長岡の気候において、日射取得の効果を本格的に享受できるのは、3月から5月の春から暖かくなってくる時期と9月から11月の寒くなってくる時期。この頃太陽が照っていると日射の暖かさのおかげで暖房がいらない日があり、高断熱住宅の日射取得の効果を実感できます。そして、暖房がいらないことに驚きます。
ダイニングのベンチソファーは一部大きくしてあり、ここも足を伸ばしてゆったーり座ることが出来ます。
テレビをゆっくり見たり、ウッドデッキを通して景色を眺めたりできます。
リビング横の外にはウッドデッキを配置して、セカンドリビングとして使えるようにしました。キッチンとも近いので、いい天気の日はここでテーブルを出してご飯食べるのもいいですね。
リビングとのつながりを持てるように床レベルは同一に、テラス窓は大きくとりました。しかし玄関側のこの方向に窓を大きくとると、来客から部屋内が丸見えとなるので、壁と横格子でゆるく目隠しをしています。
日中は室内より屋外が明るいことから壁と横格子があることで室内は外からほぼ見えません。
ウッドデッキって憧れるけど、実際作ってみたらあんまり使わないってこと、よくあります。
その原因の一つが、屋根がないこと。
一年間で、外にいてただただ心地がいい季節って、実はそんなに長くないんですね。日中寒くなく暑くなく、普通に心地いいのは5月中旬くらいと、9月中旬くらいですかね。一年のうちでもそんなに長くないんですね。
つまり、屋根がないウッドデッキは、晴れていて、外にいて心地いい時期にしか使えないことになります。
そう考えると一年のうちにウッドデッキが使える期間て、相当短いです。しかもちょうどよく晴れた、気候のいい日が休日に当たらなければ使うことはない。これではせっかく付けたウッドデッキがもったいない。条件付きでしか使えないウッドデッキは飾りでしかなくなります。
でも、屋根があればもっと使える期間を長くできます。
屋根があれば、雨の日でも使えるし、陽射しが多少強くても日陰にしてくれるので、温度を抑えることが出来ます。これ結構重要。最近の日本の夏は、異常な暑さですからね、屋根があれば日差しを防いで夏でも外にいられる期間を長くできます。
屋根があることでウッドデッキの使える期間を格段に長くすることが出来ます。
あと冬には雪を防いでくれるので、雪かきもしなくていいし、凍結によるウッドデッキ材の割れも防いでくれるので長持ちするし、ウッドデッキは是非屋根付きがいいと思います。
そしてウッドデッキを活かすために設置する方向は東向きに。
肌寒い頃、外遊びする時に風が吹くと寒くてテンションダダ下がり。
西風はどの季節も吹きます。外遊びが好きで肌寒い時期に、肉を焼きたいなら、玄関同様東向きがおすすめ。建物自体が西風を防いでくれます。
もしくは西風を防ぐ防風壁や木々などを設置するといいです。
昔の家の縁側も東向きが多い。
夏より、少し涼しい時のほうが外遊びしやすいですもんね。
夏の暑さは耐えられないけど、風がなければ寒さは少し着込んで、焚火でもしたら何とかなりますからね。
日が当たれば屋根のない暖かいところにすぐに出れるように、日の当たりやすい南東方向のウッドデッキが特におすすめ。
ってことで今回は南東方向。
ウッドデッキにはヌック。
ヌックって こぢんまりとして居心地のよい空間 ということらしい。いつからあった言葉なんでしょ。
なんかくり抜かれた秘密基地感がいいよね。ってことで、ウッドデッキ部分に設けてみました。
秘密基地感て、囲まれ感とも似ている。
囲まれ感が自分だけの落ち着く空間。イコール心地よさ。なのかな?
クッションや座布団を敷いて、心地よい空間で肉でも焼いて食べましょう。(最高)
キッチンを壁面に配置することで、対面キッチンよりも広さを有効に使えます。また対面オープンキッチンと違い、壁付けの吊戸棚が設置できます。
アイアンの棚付きのバックカウンターと奥の天井まである収納と合わせて収納力のあるキッチン収納。
奥の棚は来客にも見えにくい位置にあり、電子レンジや炊飯器を置くようにしています。
バックカウンターは、ダイニングへの配膳と片付けを楽にしたり、買い物したものをこのカウンターに一旦置き、冷蔵庫にしまいやすくしたりする役目もあります。
このバックカウンターとダイニングテーブル周りが回遊導線となっており、家族の集まるダイニングテーブルがLDKの中心となっています。
2階のなんでも部屋。
2階のこちらは1階からは見えにくいので、いろんなものを収納できる納戸としても使えます。
とりあえず、片付けるの面倒なんで置いておく用途もあり。
階段周りに設けた棚は家族共用の収納とします。
東を向いても西を向いても景色の見れる窓をとり、その窓の横に机を配置。書斎としての機能もあります。
フローリングは1階と変えて、少しお手頃なパインを想定してみました。
2階より吹き抜けを通して1階を見る。
1階と2階をつなげる部分。
1階にいる人ともコミュニケーションがとりやすい。
ちなみに外気温が涼しく、少し室温が暑いかなと思う、冷房をつけるまでもないかという時期は、1階の窓と2階の窓を両方開けることで、1階の窓から涼しい空気を取り入れ、暑い空気は上昇するので、勾配天井を通って2階窓から排出し部屋を涼しくする効果も狙ってみます。
勾配天井が温かい空気の通り道となり排出しやすくするという効果。
1階洗面室は少し幅をとって、隣をメイク台にしています。
階段を中心に、主寝室とつながり、リビングへ抜ける回遊導線になっています。
朝起きたら顔を洗ってリビングへというアプローチのしやすさ。
メイクして、主寝室のクローゼットで着替えて、なんて導線が近いのでスムーズ。
トイレはこの洗面室を通ってアプローチ。トイレが『リビング直』ってならないように、一旦緩衝の役割をいつも洗面室に持たせています。
トイレの秘めたい音もそうなんですが、一旦緩衝があることでの気持ちの上での緩衝材の役割もあります。
トイレはリビングとの距離感が少し欲しいところですが、コンパクトな家はトイレが近くなりがち。
そこで洗面室を介してトイレを設けることで、ドアや戸による心理的距離感を持たせ、住んでいる家族にも、来客へも配慮したものにしています。